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2016年12月28日水曜日

持ち主不明の・・・ ― stray

アメリカ次期大統領のドナルド・トランプ氏が居を構えるトランプタワーで不審物騒ぎがあったそうです。


NEW YORK — A stray backpack prompted the partial evacuation of Trump Tower on Tuesday, though bomb squad technicians quickly determined the unattended bag contained children’s toys and was harmless.

Video posted online showed people running through the Manhattan skyscraper’s public lobby as uniformed police officers waved them toward the exits.

Stephen Davis, the New York Police Department’s top spokesman, said the bomb squad gave the “all clear” around 5 p.m. after examining the backpack left near the entrance to Niketown, a store in the building.
(Jennifer Peltz. Stray bag of toys prompts scare at Trump Tower. The Washington Post. December 27, 2016.)


爆発物処理班が出動する騒ぎとなりましたが、危険なものでないことが確認され、騒ぎは収まったそうです。トランプ氏本人は別荘で休暇中だったらしく、不在でした。

さて、不審物というのは子供のおもちゃなどが入っていたバックパックだったそうですが、


a stray backpack


と表現していますね。この"stray"に注目です。

"stray"というと、迷子の~という日本語がまず思い浮かぶんですが、ここで"a stray backpack"は、「持ち主不明のバックパック」というのが日本語訳として相応しいように思えます。

果たして、"stray"に持ち主不明の~という意味があるのか改めて辞書をチェックしてみました。

「持ち主不明の~」というそのものの日本語は辞書では見られません。"stray"という単語は、ラテン語のextravagereに遡るのですが、extra-という接頭辞はご存知のように「外れて」という意味で、vagareとはさまよう(wander)の意です。アングロフランス語のestraierを経て、語頭消失の結果、今のstrayになったそうです。

多くのコンテクストで使われますが、通常あるべき状態や場所から外れている、というのが中心にある意味で、所有者という持ち主から外れてぽつんと置かれている、という意味では"a stray backpack"という用法も理解できます。

ところで、新幹線や地下鉄などに乗車している際に車内アナウンスで不審物への注意喚起はよく耳にするところです。日本語のアナウンスに続いて英語もありますが、"stray"は使われていないですね。

思い起こしてみると、


unattended baggage
unclaimed object
any suspicious objects


などといった英語が使われています。

"stray"をコーパスで検索してみましたが、不審物、あるいは持ち主不明の~、といった意味合いでの用例はほとんどありませんでした。

ということは、"a stray backpack"はちょっとマイナーな表現かもしれないとも思われてきました。


2 件のコメント:

  1. ”stray”と聞くと、”stray dogs”や”stray cats"が頭に浮かびます。私も「不審物」という意味での"a stray backpack"という言い方を見たのは初めてです。敢えて(?)"stray"という表現を用いたのはどうしてでしょうか、文字数の関係ですかね?

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  2. コメントありがとうございます。私も文字数の関係かと思います。ただ、タイトルではよくある話ですが、本文でもstrayを使っていますので、このライターにとっては普通の表現なのかも知れませんね。

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