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2013年7月10日水曜日

"app store"の呼称で和解: "while"の用法 ― while

今日は少し学校文法じみた話題になりますがお付き合い下さい。

"while"という接続詞がありますが、最もよく知られる用法は、「~する間に」、という時間と関連したものだろうと思います。例えば以下のような英文における用法です。
(以下、例文は特に断りが無い場合を除き、BBC Newsのサイトから引用させていただきました。)


While I was reading the newspaper, my wife was ironing my shirts.


そして、もう1つよく知られている用法は譲歩や比較・対照で用いられる、「~なのに「、「~である一方」、という用法ではないでしょうか。例えば以下のような英文です。


While I like all types of fish, my girlfriend always chooses meat dishes when we go out to eat.


と、まあ、私はこの2つの用法を知っていただけで、"while"の用法については押さえていたつもりだったのですが、下記の記事を読んで、おや、と思ったのです。


In its lawsuit alleging trademark violations and false advertising, Apple accused Amazon of misusing the "app store" name in connection with the sales of apps for Android devices and the Kindle Fire, a tablet that competes with Apple's iPad.

Amazon countered that the term "app store" had become so generic that using it would not mislead customers.

It said in a court filing that even Apple Chief Executive Tim Cook had used the term generically, in discussing "the number of app stores out there," while his predecessor Steve Jobs had talked about the "four app stores on Android."

Hamilton dismissed Apple's false advertising claim in January.
(Jonathan Stempel. Apple, Amazon end 'app store' lawsuit. Reuters. July 9, 2013.)


記事は、"app store"の呼称を巡って係争中だったAppleとAmazonが和解した、というものです。ご存知"App Store"はApple社の有名なタブレット端末iPadなどにインストールするアプリケーションを配信しているサイトですが、後にAmazonが"Appstore"の名称で自社のタブレット端末用のアプリケーション販売サイトを開設し、これを紛らわしいとApple社が訴えたのが事の発端です。

Amazonは、"app store"という呼称はほとんど一般的なもの(generic)になっており、紛らわしいとの主張はあたらないと反論していました。

そして、当のApple社のCEOが"app store"という呼称を一般的なものとして認識した発言をしているではないかと主張しています。その主張が上記引用の3段落目なのですが、これは言語学的にも説得力があり、非常に興味深い主張だと思います。

さて、今日のテーマである"while"の用法に話を戻しますと、ここでの"while"は時間的な概念を意味したものでもなければ、対比・対照、譲歩の意味でもありません。

Appleの前CEOであるSteve Jobs氏も、現CEOであるTim Cook氏も、“どちらも”、"app store"を一般的な呼称と認識していると取れる発言をしているというのが、Amazonの主張です。

そこで辞書を引いてみると、"while"の用法に、


行為の類似・対応同時に,そして一方
andとほとんど同意
(ランダムハウス英和辞書)


と載っているではありませんか。

またもや勉強不足を恥じ・・・、というところでしたが、一方で研究社の大英和(第五版)にはこの用法が記載されていません。

このような用法が一般的なのかどうか良く分かりませんが、接続詞"while"の3番目の用法として、しっかり認識した次第です。

余談ですが、この記事のタイトルで、"app store"と小文字になっているのは、AppleとAmazonの両社がこれを一般的呼称と認識して和解に至ったことを意識してのことなのだろうかと思います。しかしながら振り返ってみますと、Appleは"App Store"と大文字表記で固有名詞として用いており、一方Amazonは"Appstore"とやはり大文字表記でありながら、(Appleとは差別化を図ったと思われ)1語での表記、それぞれ一般的呼称ではなく独自のサービス名称として意識していることが窺われるのですが、現実的にはアプリケーション販売サイトとして定着した感のある"app(lication) store"だけに、無用な裁判に時間とお金をかけるのが馬鹿馬鹿しいという認識に至ったものでしょうか。


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