最近30日間のアクセス数トップ3記事

2012年10月31日水曜日

お節介、過保護 ― nanny state

超大型のハリケーンSandyはアメリカ北東部に上陸し、New York Cityに大規模な停電をもたらし、一部では交通網も寸断されるなど、甚大な被害が発生しているようです。

自宅にテレビがないのでインターネットで情報を得ていますが、アメリカのメディア関係のTwitterのタイムラインはここ数日、この件に関するもので埋め尽くされています。


It takes a disaster to remind us how much we depend on our local and state governments. In the middle of a presidential campaign, Hurricane Sandy has put Barack Obama and Mitt Romney on the sidelines, reminding us how much we count on mayors and governors to protect us, to rescue us and to keep our streets, buses, subways, airports and commuter rails running.

After a season of debates about the deficit, taxes and health care, Americans have discovered that they cannot survive without government: to provide clean water, reliable transportation systems, and emergency services when floods, fires and power outages force them to abandon their homes. Hurricane Sandy even demonstrated that sometimes politicians should do more than what we want, especially when they are trying to save us from ourselves.
(Mitchell L. Moss. Sandy debunks 'nanny state'. CNN. October 31, 2012.)


上記に引用した記事はCNNのものですが、タイトルに注目しましょう。


Sandy debunks 'nanny state'


"debunk"という単語については、つい先日取り上げました。(覚えていますか?)

今日取り上げるのは、"nanny state"という表現ですが、これは一体どういう意味なのでしょう?

記事の冒頭を読んでいくと、今回のハリケーンによる甚大な被害を目の当たりにして初めて、政府の恩恵というものに気づかされる、というような話が展開されています。つまり一般市民は色々なことを言ったところでやはり政府や自治体に守られている、というような話です。

"nanny state"が辞書に載っているのかと思ってランダムハウス英和を引いてみると、


(軽蔑的)福祉国家(Welfare State)


という意味が載っていました。何故"nanny state"というのかについては、解説がついています。要は"nanny"とは”おばあちゃん”、”乳母”のことなのですが、そのおばあちゃんが子供に何かと世話をする、その役割を国家(state)になぞらえている表現なのです。

つまり、国民のために何かと世話を焼く政府のこと、軽蔑的に言えば、お節介、過保護な政府を"nanny state"というようです。

今回のハリケーン被害の件で言えば、ハリケーンの上陸に際して、備えを促したり、避難勧告をしたり、といったことがそれにあたるということなのでしょう。

"nanny"という名詞自体に、おばあちゃん、乳母という意味の他に、過保護の人、という意味があるようです。

"nanny state"という表現については、


nanny government
nanny agency


など、バリエーションがあるようです。


2012年10月30日火曜日

こんな意味もあったの? ― flag

昼休みにグーグルニュースを斜め読みしていたら、日本にも進出しているハンバーガーチェーンのBurger Kingが第三四半期の利益を83%も落としてしまったというヘッドラインが目に留まりました。(Burger King Q3 profits drop 83% ― South Florida Business Journal)

外食産業も大変だなあ、などと思いながら関連記事のヘッドラインに目を遣っていると今度は、


Burger King bounces back as McDonald's flags (Reuters)


という見出しが目につきました。

"bounce back"とは、”盛り返した”、あるいは”持ち直した”というような意味になるかと思いますが、利益を83%も落とした、というヘッドラインを見た直後だったので、その矛盾に???となってしまいました。

そして、次に気になったのが、


as McDonald's flags


とある部分の"flag"なのですが、さてこの"flag"の意味をご存知ですか?”旗、フラッグ”の"flag"と思いきや、それは間違いではありませんが、一応別単語なんですねぇ。今日辞書を引いてみるまで、知りませんでした。


Burger King bounces back as McDonald's flags

(Reuters) - Burger King Worldwide Inc (BKW.N) turned in stronger-than-expected U.S. and Canadian restaurant sales for the latest quarter - when rival McDonald's Corp (MCD.N) posted its worst quarterly restaurant sales growth in nine years.
(Burger King bounces back as McDonald's flags. Reuters. October 29, 2012.)


Burger Kingに対して、McDonald'sは言わば競合他社です。Burger Kingが盛り返してきたのに対して、McDonald'sが"flag"とは、対比させているというコンテクストを読めば何となく想像がつきますが、果たしてその意味は?

改めて英和辞書を引いて知ったのですが、"flag"という単語は”旗、フラッグ”という意味以外にも多くの意味があったのでした。しかも別単語であり、この記事における"flag"も、”旗、フラッグ”の"flag"とは別の単語です。その意味とは、


(活力・活動・興味などが)衰える、弱る、緩む


という意味です。上記の引用部分を読むともう明らかですが、競合のMcDocnald'sの売上げが過去最悪となったのに対して、Burger Kingが伸びている、ということでした。

さて、"flag"という単語の話に戻りますが、衰える、という意味での、"flag"の語源は、"flap"(旗などがぱたぱたとはためく、翻る、という意味)と"fag"(へとへとに疲れる、という意味)の混成によるものだということです。

さらに興味深いのですが、”旗、フラッグ”という意味の名詞としての"flag"は語源がはっきりしないらしく、American Heritage Dictionaryなどでは"Origin unknown."となっています。一説によると、"flag"は(旗が)はためくという意味の動詞でもあり(現在では廃語)、その意味自体は擬音語として生まれたとも言われています。

帰宅してから研究社の大英和を参照したのですが、"flag"の語源はクエスチョンマーク(?)だらけで、ちょっと読み解くのに難儀するエントリです。

ひとつ興味深いことは、今日取り上げた、”衰える”という意味での動詞の"flag"は、旗(フラッグ)が風に煽られてはためいている様子を言うのではなく、風が止んで垂れ下がっている様子を捉えている、ということです。


2012年10月29日月曜日

つまみ食いに用心! ― sample

ハロウィーンの季節です。先週末でしたが、小学校に通う愚息が友達の家で行われる”ハロウィーンパーティ”に招待され(何と招待状付き!)、キャンディーやらチョコレート、その他駄菓子の入った袋を貰って帰ってきました。私が子供の時分にはハロウィーンなんて聞いたこともありませんでしたし、ましてパーティに招かれるなどありませんでしたが、ライフスタイルや文化がどんどん欧米化してきたということでしょうか?

欧米化と言っても、ことハロウィーンに関しては文化などという高尚なものではなく、日本においてはほとんど商業イベントでしかないと思っていますが、アメリカのメディアなどに見るハロウィーンも”trick-or-treat”に代表される、スイーツの販売合戦ではないでしょうか?


These days Halloween candy crowds the aisles of store shelves within minutes of the final back-to-school sale. And while it might seem like a good idea to stock up during the early-bird sales, too often "the candy is gone by the time it's actually Halloween, so you have to go for a second batch," says Melinda Johnson, a dietitian and director of the didactic program in dietetics at Arizona State University in Tempe.

Not only do you end up spending more, there's a good chance you end up sampling more. (By the same token, don't stray into the after-holiday clearance sales.)
(Dana Sullivan Kilroy. Taking the fright out of Halloween candy. Los Angeles Times. October 27, 2012.)


今日は、"sample"(sampling)という単語を取り上げました。この記事では何を意味しているでしょうか?

そうです、ここでは、”つまみ食い”という表現がぴったりではないでしょうか?(つまみ食い、という表現について、以前取り上げた、"sneak bites of~"もご覧ください。)

ハロウィーンが近づくにつれて、スーパーの棚にはキャンディーやチョコレートの類が所狭しと並べられるのは最近ではアメリカも日本も同じようです。

売る側も賢いもので、早く購入すると割安だったり、沢山買うとお得だったり、色々ですが、買ってしまったら食べずにはいられない、つまり肝心の”その日”が来る前につまみ食いしてしまって、また買うはめになる、ということなのです。

ここのところハロウィーン関係の記事をよく目にしますが、上記のような記事の他、ハロウィーン関係の記事と言えば、子供が甘いものばかりを食べないように如何にコントロールするか、とか、ハロウィーンのお菓子で如何に太らないようにするか、など、およそハロウィーンという行事からはかけ離れた話題ばかりです。

振り返ってみますと、2年前に当ブログではハロウィーン特集を組んでいます。


2012年10月26日金曜日

背筋が寒くなるようなニュース ― obliterate

読んでいて背筋が寒くなるようなニュースです。北朝鮮から、と言えばあまり補足説明も必要ないかも知れませんが・・・。


A high-ranking army official in North Korea was reportedly executed by a firing squad earlier this year for drinking alcohol during the 100-day mourning period following the death of North Korean leader Kim Jong-il, according to South Korean media.

Kim Chol, who served as vice minister of the army, was said to have been accused of drinking liquor during the mourning period for Kim Jong-il and put before a firing squad in January, Australian media wrote.

The Telegraph UK, however, cited an unnamed South Korean media source as saying that Kim Chol was "forced to stand on a spot that had been zeroed in for a mortar round and 'obliterated.'" North Korea's new leader Kim Jong-un allegedly ordered to leave "no trace of him behind, down to his hair."
(Andres Jauregui. Kim Chol, North Korea Official, Allegedly Executed For Drinking During Kim Jong-il Mourning Period. The Huffington Post. October 24, 2012.)


北朝鮮の金正日総書記が死去したのは昨年の12月、ちょうどクリスマスの前くらいでしたが、いわゆる”喪中”(mourning period)に酒を飲んだというかど(廉)で、軍の高官が処刑されたと韓国のメディアが報じたということです。

射殺だったようですが、故金正日総書記の後継である金正恩による処刑指令は、


"no trace of him behind, down to his hair"


であったということですから、背筋が寒くなるようなおぞましさです。

さて、今日の単語は"obliterate"です。

処刑された高官は銃殺刑により、抹殺されました。"obliterate"に”抹殺”の意味はあるのでしょうか?

単語の成り立ちをご存知の方には釈迦に説法のようになってしまいますが、"obliterate"は、覆う(前置詞のover)という意味の接頭辞ob-、とletter(文字)から成っており、書かれている文字を判読不可能にする、消す、ことを意味しています。

が、American Heritage Dictionaryの定義を参照しますと、1番最初の定義に、


To remove or destroy completely so as to leave no trace


とあり、"so as to leave no trace"というところが、上記に引用した処刑指令の表現とほぼ一致し、まさしく”抹殺”の意味があるようにとれます。


2012年10月25日木曜日

金魚鉢の生活!? ― fishbowl

満員の通勤電車でNew York Postのツイートから面白そうな記事にアクセスするのが最近の日課みたいになっているのですが、不慮の死で今年2月にこの世を去ったホイットニー・ヒューストンさんに関する記事に偶々アクセスしました。

ホイットニー・ヒューストンさんの遺族が出演するReality Show(いわゆるドキュメンタリー番組のことです)に関する記事です。


Halfway through tonight’s premiere of “The Houstons: On Our Own,” a reality show about life after Whitney, Pat, the singer’s former sister-in-law and the series’ executive producer, cries about the hardship of making decisions in a fishbowl.
(Linda Stasi. ‘Houstons,’ we have a problem - Whitney's family opens doors while they grieve. The New York Post. October 23, 2012.)


記事のタイトルから内容の想像がつくと思いますが、(有名人の遺族ということで)プライバシーが無いと嘆きながら、(ドキュメンタリーに出演するなど)自らプライバシーを曝け出している(ドアを開いている)、という皮肉の記事です。

”プライバシーが無い”と書きましたが、そのような境遇のことを英語で、


(live) in a fishbowl


と表現します。American Heritage Dictionaryでは、インフォーマルな用法として、


A place that is lacking in privacy.


と定義されています。

用例をもう1つ引用します。


Does Halle Berry have it made? In many ways, the co-star of the upcoming movie “Cloud Atlas” clearly does, but the Academy Award-winning movie star said living her life in a “fishbowl” of constant attention sometimes was “hard to bear.”
(Halle Berry on Challenges of Life in a ‘Fishbowl.’ ABC News. October 22, 2012.)


"fishbowl"とは金魚鉢のことなのですが、透明のガラス製のポットを想起してもらえばその比喩が分かりやすいのではないでしょうか?

愚息が今年の夏祭りの金魚すくいでとってきた金魚はその半分くらいが死んでしまいましたが、拙宅の内玄関においた金魚鉢(こちらは陶製の鉢で、透明ガラスではありませんが)で現在も4~5匹が元気に泳いでいます。当初は愚息と兄妹、そして私たちがひっきりなしに様子を見に金魚鉢を囲むので、金魚のプライバシー(!?)はありません。最近では朝に餌をやる愚息くらいしか邪魔しないようですが・・・。


2012年10月24日水曜日

make off with

日本では遠隔操作ウィルスに感染したPCの所有者の冤罪事件がトップニュースになっていますが、アメリカでは書店のPOS端末(日本語では販売時点情報管理システムというらしいです)がハッキングされ、クレジットカード番号などの顧客情報が盗み取られたというニュースが話題になっています。


Hackers steal customer data from Barnes & Noble keypads

Point-of-sale terminals at 63 bookstores are found to have been modified to hijack customers' credit card and PIN information.

Hackers broke into keypads at more than 60 Barnes & Noble bookstores and made off with the credit card information for customers who shopped at the stores as recently as last month.

The company discovered the breach on September 14 but kept it quiet while the FBI attempted to track the hackers. Hackers broke into the point-of-sale terminals at 63 stores across the country, including locations in New York City, San Diego, Miami, and Chicago.
(Steven Musil. Hackers steal customer data from Barnes & Noble keypads. CNET. October 23, 2012.)


POS端末もハッキングされるものとは知りませんでしたが、あらゆる情報が電子化され、ネットワークでつながっている高度情報化社会の現代にあっては、ハッカーのターゲットにならないものを探す方が難しいのでしょうか。

今日取り上げた成句、"make off with"は、盗む、という意味で用いられます。

"make off"という成句には、慌てて立ち去る、逃れる、という意味があるようですが、その"make off"に"with"がついた、"make off with"は、”~を持って、~と共に”(with~)、立ち去る(make off)、という成り立ちなのでしょうか?意味の成り立ちの順序までは分かりませんが、何となくそのような発展をしたような気がします。


2012年10月23日火曜日

米国発:エナジードリンクが危険 ― pick-me-up

アメリカでの話ですが、Monster energy drinkという、いわゆるドリンク剤を飲んだ5人が死亡したというショッキングなニュースが入ってきています。

5人の死亡例には14歳の少女が含まれ、少女の両親が製造販売元を相手取って訴訟を起こしているそうです。

このニュースについて知ったのは昨日だったのですが、今日のヘッドラインでは米国医薬食品局(FDA)が調査に乗り出したとあり、トップニュースの扱いです。


Amid increasing scrutiny of the fast-growing energy drink industry, federal health officials are investigating reports that five people have died since 2009 after consuming Monster Beverage Corp.'s energy drinks.

The U.S. Food and Drug Administration said it hadn't established a link between Monster energy drinks and the reports it has received concerning five deaths and another non-fatal heart attack. The government inquiry comes after a Maryland couple sued the Corona company last week in California for negligence and wrongful death in connection with the death of their 14-year-old daughter, Anais Fournier.
(FDA probing reports of energy-drink deaths. Los Angels Times. October 22, 2012.)


このMonster energy drinkなる商品は日本でもアサヒ飲料から販売されているようですが、カフェインの含有量が半端でないらしく、一般的なカフェイン飲料の5倍近くのカフェインが含まれているそうです。

記事にも出てきますが、恐らく同じ種類のドリンク剤に分類されるRed Bullというものを以前飲んだことがありますが、効果覿面で、飲んだ日の夜ほとんど寝つけず、その効果に驚いた記憶があります。

エナジードリンクは米国で売り上げを伸ばし、急速に市場を拡大しているそうですが、この手のドリンクのことを英語で、


pick-me-up


と表現することをご存知でしたか?


Some lawmakers and consumer advocates are calling for tougher regulation of energy drinks sold by Monster, Red Bull and beverage giants such as Coca-Cola Co. and PepsiCo Inc. These highly caffeinated and sometimes sugar-laden drinks, including top sellers 5-Hour Energy and Rockstar, have become popular pick-me-ups for a wide range of consumers and are heavily marketed as a way to boost performance, focus or overall health.
(ibid.)


"pick-me-up"を英和辞書で調べると強壮剤という訳語が見えますが、"pick up"という動詞句が、”(人を)元気づける”という意味で用いられることから来ていると思われます。

2012年10月22日月曜日

不機嫌なのはPMSのせい? ― debunk

女性の皆さんにはセンシティヴな話題かも知れません。男性の私には分かる訳もない、理解できるレベルを超えた話ですが・・・。

いわゆる”月のモノ”の少し前になると女性が機嫌が悪くなったりするのは科学的(医学・生理学的)な根拠がない、という報告がカナダの専門科らによって発表されたというニュースです。


A woman’s best three-letter excuse for monthly bouts of irritability is being dismissed by a group of Canadian researchers.

Premenstrual syndrome (PMS) is widely used to explain mood swings, food cravings and crying spells that women sometimes experience shortly before their menstrual cycle. But a brave group of female researchers have debunked that idea – and it is sure to set off a firestorm among women who believe their emotional state is more fragile in the days before their period than what the medical evidence suggests.
(Caroline Alphonso. Is PMS a myth? One study says yes. The Globe and Mail. October 18, 2012.)


日本語でも”PMS”(Premenstrual Syndrome、月経前症候群)として知られていますが、記事によりますと、女性の月経サイクルと気分の変化に関する40以上の文献等を調査したところ、月経前に見られるホルモンレベルの変化と抑うつや苛立ちなどのネガティヴな気分との間に明確な相関関係はほとんど認められなかったということです。

この調査結果については当然ながら女性の間から反発も起きているそうですが、調査を担当した大学教授によると、月経前に見られる胸の張りや胃痛といった生理的な症状は別に置いておくとして、気分の変化というものが安易に月経サイクルと結びつけられており、それが却って女性が感情を表出することを妨げる結果にもなっているのではないかという意見を持っているということです。

女性の不機嫌をPMSと決めつけてしまうことは、"myth"(根拠の無い神話)である、ということです。

さて、今日の単語ですが、"debunk"という単語を取り上げたいと思います。

女性の不機嫌はPMSが原因、という考え方は今回の報告で、"debunk"されたということですが、"debunk"を英和辞書で引いてい見ると、


偽りを暴く、正体を暴露する


という訳語が見えます。単語をよく見ると、離脱や分離を意味する接頭辞の"de-"と"bunk"という構造になっていることが見てとれます。では、"bunk"とは一体何を意味しているのでしょうか?

American Heritage Dictionaryに興味深い語源解説があります。

"bunk"というのは、でたらめ、たわ言、という名詞の意味もある単語ですが、その語源は"bunkum"というまた別の単語に由来するそうです。

ではその"bunkum"とは何かというと、地名なのでした。米国・ノースカロライナ州にある、"Buncombe"という地名に由来するのだそうです。この"Buncombe"から選出された政治家が国会で行っていた演説がしばしば中身の無い、空疎なものであったため、"Buncombe"はそのような誠意の無い演説を指す代名詞のようになり、"bunkum"とスペルを変えて定着した、ということです。

空疎で中身のない政治家の言葉はいつの時代も同じでしょうか。何だか今日の民主党政権の状況を想起しますが、首相や大臣の出身地がそのような表現の語源になったら・・・。英単語は面白いですね。


2012年10月19日金曜日

あなたは”millennial”? ― millennial

アメリカに旅行したことのある方はよくご存じかもしれませんが、Macy'sというのは向こうで有名なデパートの名前で、日本で言うと三越とか高島屋みたいなところです。(別に大丸でも、伊勢丹でもいいですが・・・。)

そのMacy'sに関するニュース記事からの引用です。


NEW YORK — Macy's is firing its first salvo at the millennials.

The venerable department store chain is launching 13 new brands and expanding 10 other existing labels that it believes will resonate with shoppers in that 13-to-30 age group.

(中略)

The millennials generation is the first to grow up with cellphones and the Internet and its members are accustomed to getting fast access to anything they want.

In March, Macy's restructured its merchandise team to focus on those shoppers and plans to make other major changes in the next three years to further rope them in.
(Macy's launches new brands to target millennials. The Wall Street Journal. October 18, 2012.)


日本ではデパート業界は苦戦を強いられていますがアメリカでもそうなのでしょうか、Macy'sはターゲットの顧客層を10代~30代に据えてブランドなどを刷新する戦略を取るようです。

ところで今日の単語ですが、"millennial(s)"という単語をご存知でしょうか?そのスペルから、千(1,000)に関係していることは想像がつきますが、記事の冒頭で何が言いたいのかよくわからなかったので辞書(ランダムハウス英和)を引いたところ、


千年の;千年至福の


という形容詞の意味が載っているだけで、???となってしまいました。

後段を読むと、"millennials generation"とあり、世代のことを言っているということが分かります。ここでAmerican Heritage Dictionaryの登場です。


A member of the generation born from the early 1980s to late 1990s, especially in the United States and Canada; a member of Generation Y.
(American Heritage Dictionary, 5th edition.)


この定義を読んで、すっきりです。記事の内容とも合致します。別名”Generation Y”とも言われるそうですが、1980年代~1990年代に生まれた世代のこと、現代で言えば10代から30代前半くらいの人たちを指しているのです。

不思議なのはなぜランダムハウス英和ではこの世代という意味が載っていないのかということです。ジーニアス英和大辞典も見ましたが載っていません。研究社の大英和辞典も同様です。

つまり、”千年至福の~”という形容詞としての、"millennial"は載っているのですが、世代を意味する名詞の"millennial(s)"(Merriam Websterによると通常複数形で用いられる)は載っていないのです。

ところであなたは"millennials"ですか?私は微妙なところです(笑)


2012年10月18日木曜日

大の字 ― spread-eagle

Julia Gillardさんと言えばオーストラリアの女性首相ですが、彼女はよくよくハイヒールではトラブルに見舞われる運命にあるようです。もう大分前の話という感がありますが、今年の1月、オーストラリア国内での式典の最中に先住民のデモ集団から取り囲まれて避難する際にハイヒールが片方脱げてしまい、それがオークションに出品されるという前代未聞の一件がありましたが、今回はインド訪問中に、ハイヒールが濡れた芝生にひっかかり脱げてしまって、転んでしまうという失態を演じてしまいました。


LAHORE: Australian Prime Minister Julia Gillard on Wednesday had to face an embarrassing situation as her foot slipped and she tumbled on to the ground during her visit to the Gandhi Memorial in New Delhi.
(Sabir Shah. Australian PM tumbles in New Delhi. The International News. October 18, 2012.)


上記はThe International Newsの記事から引用したものですが、記事中の写真にはGillard首相がこける瞬間に撮影された写真が掲載されています。ただ、まさに上体が倒れるその瞬間の写真であり、ブレています。

関連記事を探したところ、首相のお膝元、オーストラリアの主要紙であるHerald Sunの記事がありました。


JULIA Gillard has laughed off her latest shoe stumble where she almost fell on her face in India after her heel became stuck in wet grass.

The Prime Minister was spread-eagled and broke her fall with her hands.
(Phil Hudson. Julia Gillard slips and loses a shoe on visit to New Delhi. Herald Sun. October 17, 2012.)


今日は、"spread-eagle"という単語を取り上げます。


The Prime Minister was spread-eagled...


とあり、"spread-eagle"は動詞です。ランダムハウス英和で調べると、ハイフンなしの名詞(spread eagle)と、ハイフンのついた動詞、また形容詞(spread-eagle)の2つのエントリがありました。

この単語を知りませんでしたが、意味はすぐにピンときました。ワシ(eagle)が翼を広げた(spread)様子を形容したものであり、日本語で言うところの”大の字”です。

記事ではビデオ映像が掲載されているのですが、一部始終がはっきり分かります。首相は両方のハイヒールを芝生にとられてまさに大の字の格好で転倒し、あわや顔面を地面に打ち付けるところを両手で何とか手をついて庇うことができたという体です。

さて、"spread-eagle"は動詞だと書きましたが、そうなると"was spread-eagled"は受身形だということになります。記者がなぜ能動態(The PM spread-eagled...)とせずに受身形(The PM was spread-eagled)を使ったのか興味深いところです。

2012年10月17日水曜日

"jump"の意味(2) ― jump-start

景気に関して明るいニュースがないのは日本もアメリカも同様ですが、アメリカでバッテリーメーカーが破産したというニュース記事から冒頭の部分を引用します。


DETROIT — The troubled battery maker A123 Systems filed for bankruptcy on Tuesday, dealing a blow to the Obama administration’s program to jump-start a domestic battery industry and spur development of electric vehicles.
(Maker of Batteries Files for Bankruptcy. New York Times. October 16, 2012.)


今日は、"jump-start"という単語を取り上げたいと思います。"jump-start"を辞書で引くと、主にアメリカ英語の表現ということで、


再開する、活を入れる
よみがえらせる


などの訳語が見えます。

"jump-start"がなぜこのような意味を持つようになったのでしょうか?

語源欄の解説にあったわけではありませんが、"jump-start"とは自動車のバッテリーがあがってしまった時に別の車のバッテリーをつないで初動の動力を送り込み、同時に人力で後押ししながら車を動かすことを指しています。(ほとんどの辞書で、"jump-start"の1番目の意味として載っています。)

"jump-start"の代わりに単に"jump"という動詞で表現することもあるようですが、"jump"という慣れ親しんだ単語にも実はいろいろな意味があるということを改めて思い知らされた気がします。(過去に取り上げた"jump"の意外な用法についてはこちら。)

”ジャンプ”というカタカナに慣れているとなかなか気がつかない用例かもしれません。大分前のことですが、車のバッテリーがあがってしまって困っているという人から、”ジャンパーを貸してもらえませんか?”と頼まれ、自動車にあまり詳しくない私は???だったのを思い出します。

ちなみに、Merriam Websterによると初出は1973年ということですから、かなり新しい単語です。

さらに、ちなみに、どうでもいいことですが、研究社の大英和(第五版)には、"jump-start"のエントリがありません。


2012年10月16日火曜日

踊らされてはいけない ― bandwagon

少し前から気になっていたのですが、"gluten-free"なるキーワードが海外、特にアメリカで大いに話題です。Google Newsのキーワードで、大統領選などと並んで、"gluten"が上がっていることもありました。その時は中身にあまり関心も無くスルーしていたのですが、今日、とある記事を読んでなるほどそういうことだったのかと分かった気がしました。


Once you've spotted gluten-free shampoo on the store shelf, you know the trend's gone too far.

Whether food contains gluten - a protein found in wheat, rye and barley - used to concern a relatively small group of people who suffer from celiac disease, an autoimmune reaction to gluten in the small intestine. While growing numbers of people have been diagnosed with the disorder over the last decade, the crowds that have jumped on the gluten-free bandwagon for other reasons outstrip them.

Gluten never was in most shampoos, by the way, save those containing wheat germ oil. Unless you plan to drink it, it's harmless since gluten must be ingested for the body to react, says Peter Taylor, executive director of the Canadian Celiac Association.
(Erin Ellis. Gluten-free trend has legs, for now. The Vancouver Sun. October 14, 2012.)


グルテン(gluten)とは小麦などに含まれるたんぱく質の一種ですが、セリアック病(Celiac disease)と呼ばれる自己免疫疾患の患者がこれを摂取すると、腸内に炎症を生じるなどの症状が発生し、ひどい場合には死に至ることもあるそうです。

ところが、いつの間にやらグルテンを避けることがダイエット、つまり痩身に良い、というような風説が広まり(これには、アメリカの”激ヤセ”セレブの一部がツイッターなどでグルテン忌避を広言したことなどが原因とも目されています)、一般大衆の多くがそのような主張に盲目的に従っているという状況があるようです。

そして、記事にありますように、ついには"gluten-free"のシャンプーまでお目見えしたとか!?


"We see the market for gluten-free going crazy," says dietitian and author Shelley Case...
(ibid.)


とありますが、まさしくクレイジーではないでしょうか?

今日は、"bandwagon"という単語を取り上げましたが、"bandwagon"とはお祭りパレードなどで音楽隊を載せたワゴンや車列のことを指しています。American Heritage Dictionaryでは、"Informal"として、


A cause or party that attracts increasing numbers of adherents
(何やら最近の”維新”を想起させます・・・)


という意味と、


A current trend


という意味を載せています。要するに流行(トレンド)のことです。”グルテンフリー”は医学的、科学的な話を飛び越えて(自己免疫疾患に苦しむ患者にとってはシリアスな話ですが)、1つの流行になってしまったということです。

"bandwagon"については、"jump on the bandwagon"という成句で用いられることが多く、上記の引用でも、


the crowds that have jumped on the gluten-free bandwagon


となっています。"bandwagon"が使われるのは、大抵の場合において、政治のコンテクストにしろ、大衆受けする商品やサービスにしろ、一時的な流行、時流を批判的に表現する場合です。Collins-Cobuild Dictionary of Idiomsでは、下記のように解説されています。


If you say that someone, especially a politician, has jumped on the bandwagon, you disapprove of their involvement in an activity or movement, because you think that they are not sincerely interested in it, but are involved in it because it is likely to succeed or it is fashionable.


つまり、"bandwagon"とは皮肉の表現であると言えるでしょう。

意外にも、日本では(まだ)グルテンで大騒ぎしていないようですが、踊らされてはいけない、ということではないでしょうか。

大分前にたまたま見かけた雑誌New Yorkerの風刺画(cartoon)がまさしく踊らされる大衆を描いているようです。


"I have no idea what gluten is, either, but I'm just avoiding it, just to be safe."
(Alex Gregory. New Yorker Cartoon. Item #8770827.)


2012年10月15日月曜日

get ~ worked up

まずは、下記の引用を読んでみましょう。


A week following the launch of the iPhone 5 and iOS 6, Apple CEO Tim Cook apologized for the company's imperfect new Maps app. But flawed maps haven't been the only issue to get some consumers worked up in the three weeks since they got their hands on Apple's latest smartphone.
(Edward C. Baig. Woes with iPhone 5 go beyond Maps. USA Today. October 12, 2012.)


地図アプリの不具合で話題のiPhone 5に関する記事ですが、中ほどに出てくる、


get some consumers worked up


という部分に注目します。この部分は、


get (人) worked up


というように構文解釈できます。"worked up"は、動詞"get"の目的補語にあたる形容詞、もしくは動詞の過去分詞形です。(ここでは動詞の過去分詞形)

よくある、


get a person drunk
get hair cut


などのフレーズと同じです。

ところで、"work up"とはどういう意味でしょうか?私はこのフレーズを知らなかったので辞書を引くと、様々な意味があるようです。

その中で、記事のコンテクストとも照らし合わせてしっくりくるのは、


怒らせる、いらだたせる


という意味です。

2012年10月12日金曜日

言い逃れは許さない ― live under a rock

New York Post紙の記事からの引用です。

処方箋が必要な医薬品(prescription drug)をネット上で違法に売買していた21人が逮捕されたというニュースです。


The 40-year-old man accused of placing the ad was among 21 people arrested in an attempt by the New York Police Department to make an example out of some of the smallest of small-time drug dealers: students, young professionals and others who clean out the medicine cabinet and then are brazen enough — and foolish enough — to offer the pills for up to $20 a pop over the Internet.

"Whether the drug deal occurs on the street corner or on the Internet, it's a crime," Bridget Brennan, special narcotics prosecutor for New York City, said today in a statement announcing the arrests.
(21 prescription 'peddlers' busted in Craigslist probe. New York Post. October 11, 2012.)


ドラッグのネット上での違法な売買というと、麻薬や密売、闇社会というような言葉を想像しますが、逮捕されたのは学生やフィナンシャルアドバイザーなどのごく一般人だったということです。扱われていたのは麻薬ではなく、厚生当局の承認を受けた医療用医薬品であったことから、逮捕者の一部には罪の意識が薄いようです。


Because the drugs have legal medical uses, they carry less of a stigma than illegal narcotics. After they were arrested, some of the sellers claimed they didn't know what they were doing was a crime. But investigators don't buy it.

"You'd have to be living under a rock to not know it's illegal," Brennan said.
(ibid.)


上記の引用の末尾に出てくる、


You'd have to be living under a rock...


という表現が気になりました。逮捕者はネット上で医薬品を売買することが違法だとは知らなかったと主張しているようですが、警察サイドはそれを認めません。

(違法だと)知らなかった、というんだったら、"be living under a rock"ということになるけど、そんなわけないだろう、という一種の誇張表現であると思われます。

辞書を引いても、"live under a rock"という成句などの形で載っていませんので、ググってみますと、"live under a rock"とは、文字通りには岩の下で生きること、比喩的には世間から途絶している状態、を言うようです。

ネットでの医薬品販売が違法だというルールを知らなかった、という言い抜けがもし成立する可能性は、ここ数年~数十年を世間から完全に途絶した状態で生活でもしていない限りあり得ない、というロジックなのです。

これは、以前取り上げた、”へそが茶を沸かす(pigs might fly)”の表現に似ていると思います。

この成句が使われるコンテクストをいくつかの使用例から分析するに、あること(出来事や事実、ルールなど)を知らなかったということはあり得ない、つまり知っていたはずだ、という反語的な効果を出すために用いられることが多いようです。


動詞は"live"に限らず、"be"、"hide"などバリエーションがあります。

You'd have to be hiding under a rock for the last decade not to know that half of all marriages now end in divorce, and that sexual difficulties are one of the leading complaints of unhappy couples.
(Psychology Today. 2006.)


2012年10月11日木曜日

中国で続く日本車の不買運動 ― boycott

尖閣問題を発端とする反日デモ・暴動が中国で起きていることについては9月からずっと報道されていますが、今日は不買運動に関する記事から引用します。


TOKYO—Chinese buyers turned a cold shoulder to Japanese brand car purchases last month, threatening to stall Japanese gains in the world's largest auto market and pressuring their full-year forecasts.

All three of Japan's biggest auto makers, Toyota Motor Corp., Nissan Motor Co. and Honda Motor Co., said Tuesday that Chinese sales plummeted in the wake of sometimes violent anti-Japanese protests. Tokyo's decision to buy contested islets in the East China Sea infuriated Beijing, prompting widespread demonstrations and a boycott of car and other brands made in, or by, Japan.
(Japanese Car Sales Plunge Amid China Rage. The Wall Street Journal. October 9, 2012.)


日本の自動車メーカー3社、トヨタ、日産、ホンダの中国での売り上げが激減しているそうです。日本政府が尖閣諸島を購入するアクションに出たことが中国国民の怒りを買い、日本製品のボイコットにつながっているということです。

ボイコットは日本語でもカタカナで知られた単語ですが、英語では、"boycott"というスペルで、これは元々、”Charles C. Boycottさん”という人の名前に由来するものです。

American Heritage Dictionaryを引くと、"boycott"のエントリーでは、詳細の語源について"Word History"ということで特別に説明がつけられています。

それによりますと、”Boycottさん”はアイルランドの不動産仲介業者だったようですが、土地の賃借料を下げようとしなかったり、土地の賃借人を追い出したりしたため、家族共々、仲間から村八分にされてしまったのだそうです。この冷遇は当時非常な速さで人口に膾炙し、"boycott"という単語が定着したのだということです。

つまり、"boycott"とは、語源的には”ボイコットされた人”のことなのでした。

ちなみに、これもAmerican Heritage Dictionaryに書いてあることですが、英語のみならず、フランス語、オランダ語、ドイツ語、ロシア語でも、”ボイコット”という単語があるのだそうです。


2012年10月10日水曜日

ビッグバードを怒らせたオバマ大統領 ― ruffle a person's feather

アメリカ大統領選で、オバマ陣営側が作ったCMがセサミストリートの番組制作会社であるSesame Workshopを怒らせているというニュース記事を読みました。

キャンペーンのCM中に、対立候補であるロムニー氏を揶揄する形で、セサミストリートのビッグバード(Big Bird)を登場させているそうなのですが、それが発端のようです。


WASHINGTON – President Obama has ruffled some feathers at PBS by putting Big Bird in a TV ad attacking Mitt Romney.

“We have approved no campaign ads, and as is our general practice, have requested that the ad be taken down,” Sesame Workshop, the PBS-affiliated non-profit behind Sesame Street, said today in a statement.
(S.A. Miller. Sesame Street wants Big Bird out of Obama campaign ad. New York Post. October 9, 2012.)


今日は、"ruffle a person's feather"という表現を取り上げます。

字義通りの意味、つまり“羽を逆立てる”という意味と、コンテクストから大体想像がつきますが、この成句は、


(人を)怒らせる


という意味で用いられます。

例えば、ランダムハウス英和辞書では下記のような例文が紹介されています。


He ruffled the boss's feathers with his pungent statements.


引用した記事ですが、対象がビッグバード(つまり、鳥)というだけに、"ruffle some feathers"とは、記者の洒落でもあるのでしょうか。


2012年10月9日火曜日

clad

"ironclad"という単語がありますがご存知でしょうか?文字通り、"iron"+"clad"ということで、


鎧を身に纏った、(軍艦が)装甲した


という意味なのですが、


非常に厳しい、厳格な、破ることができない


といった抽象的な意味でも用いられます。例えば、以下のような用例があります。


Another idea is to create different classes of patents, so that some kinds of inventions, like pharmaceuticals, would receive 20 years of ironclad protection, while others, like software, would receive shorter and more flexible terms.
(In Technology Wars, Using the Patent as a Sword. The New York Times. October 7, 2012.)


引用した記事は、特許を巡る訴訟合戦に明け暮れるスマートフォン業界を批評した記事なのですが、この分野の特許というものが、例えば医薬品などの特許と較べて性質がかなり異なるということや、アップルやグーグルといった会社では、訴訟と特許取得に費やしたコストが研究開発費を上回った、ということなどが触れられています。少し長いですが読んでみると興味深いものがあります。

さて、"ironclad"という単語に戻りますが、"iron"はいいとして、"clad"はどういう意味でしょうか?調べてみると、"clad"は、古語や文語の世界で、"clothe"という動詞の過去分詞形でした。そういうわけで、"iron"を身に纏った、ということになるんですね。

この種の表現が他にあるのかと調べてみると、それが沢山あってちょっと驚きです。


black-clad
leather-clad
bikini-clad
pajama-clad
tuxedo-clad
kimono-clad


などなど、枚挙に暇がありません。

ちなみに、”unclad”は、衣服を着ていない、裸の、という意味です。


2012年10月8日月曜日

大学の秋入学 ― matriculation

体育の日の祝日、いかがお過ごしでしょうか?

昨日関東地方はあいにくの雨、午後からは晴れ間も出ましたが、今日は朝から抜けるような晴天です。気持ちがよいのでどこかに出かけてみようかと考えています。

さて、今日は大学の秋入学に関する話題からです。

先週金曜日の産経新聞朝刊1面で、東京大学の秋の入学式を伝えていました。「国際化の秋」と題する記事で、主に留学生を対象とする、英語のみの講義で構成されるコースだそうですが、有名な安田講堂を背に、入学者が笑顔で写っている写真が掲載されていました。

写真には、バックの講堂に掲げられた「東京大学 秋季入学式」という文字と共に、(当然でしょうが)英語でも書かれていました。ちょっと読みづらかったのですが、


The University of Tokyo Fall-Semester Matriculation Ceremony


とありました。さて、"matriculation"なる単語ですが、あまり馴染みがないのではないでしょうか?

早速辞書を引いてみると、


(大学)入学許可


というような意味になっています。

入学式は"entrance ceremony"というものだと思っていたのである意味新鮮でした。

ちなみに、名古屋大学の秋入学式では、"Entrance Ceremony"が使われていました。

"matriculation"なる単語は、ラテン語で小さなリストを意味する、"matricula"("matrix"という単語にも関連)から来ているそうです。大学への入学を許可される者を記載したリストのことを指しているのだと思われます。

欧米などでは普通に使われる単語のようですが、日本の英語(教育)ではあまり聞きませんね。"entrance examination"(入学試験)というのも、"matriculation examination"がよく使われるようです。

"entrance ceremony"に比べて、何となく格調高い響きのする表現ではありませんか!?最高学府と言われる東大ならでは!?でしょうか。


2012年10月5日金曜日

思わず・・・ ― cannot help but~

ツイッターでNew York Post紙のタイムラインを読んでいましたら面白い記事がありました。

ちょっと下世話な内容なので恐縮ですが、取り上げる表現は真面目なので赦してください(笑)


Clinton checks out Christina's boobs

You might have expected this to be about Bill’s wondering gaze, but this time it was his wife Hilllary who took a cheeky glance at Christina Aguilera’s ample cleavage.

Secretary of State Clinton couldn’t help but take a look at the superstar’s bosom at the US Department of State as Aguilera, a UN World Food Programme Ambassador, was being honored on Wednesday.
(Clinton checks out Christina's boobs. New York Post. October 4, 2012.)


Hilary Clintonとありますのは説明するまでもなく、元アメリカ大統領のBill Clinton氏の夫人で、現在国務長官を務めるお方です。

一方、Christina Aguileraさんという方は全く知りませんが、"superstar"とありますので女優でしょうか?国連で食糧問題関係の大使をされているそうですが、とても豊かな胸をお持ちの方のようです。

それで、Hilary Clintonさんが思わずその胸に目が行ってしまった、というお話です。記事に証拠写真らしきスナップショットが出ています。

今日取り上げる表現は、


couldn't help but~


という、恐らく高校の英語で習う表現だと思いますが、覚えていますか?

"help"という動詞には、助ける、援助するという意味の他に、


抑える、こらえる、我慢する、控える


といった意味でも用いられ、教科書に決まって出てくるのが、


I couldn't help laughing.(こらえきれず笑ってしまった。)


という例文ではないでしょうか?教科書では、この意味での"help"は、"cannot", "couldn't"などの否定の助動詞と共に用いられ、"help"の後には動詞のing形が来る、と説明されているかと思います。

上記の引用では、"help"に続けて、"but"、そして動詞の原形が来ています。ランダムハウス英和辞書を見ると、”主に米話”とあり、アメリカ人の口語表現であることが分かります。

改めて"help"のエントリをざっと見たのですが、この意味での"help"の用法パターンにはいくつかあることが分かります。


cannot help ~ing
cannot help but do
cannot help something
cannot help oneself, and ~


などです。

ところでこれらの表現はどれも同じものなのでしょうか?それとも、場合によって使い分ける、つまり微妙な意味の差異があるのでしょうか?

ランダムハウス英和の説明や例文を見ているとどれも同じように思えましたが、ネット上をいろいろ検索していると、意味に差異があるのだというような興味深い考察も見られました。

1つ引用させていただきますと、こちらのサイトでは、"cannot help but"に続く動詞には制約があると説明しています。その制約とは、”「自然に生じる精神的,感情的反応(involuntary mental or emotional reaction)」を表すものに限られる”というものです.
一方、"cannot help ~ing"というパターンにおける動詞(~ing)にはそのような制約がないようです。なるほど、という感じがしました。

"involuntary mental or emotional reaction"という定義はこの表現の本質をよく捉えているように思われます。日本語にしてみれば、”思わず・・・してしまった”、という感じでしょうか。

"cannot help but~"、"cannot help ~ing"共に、”思わず・・・”の意味では使えるけれども、”~せざるを得ない”の意味で使えるのは、"cannot help ~ing"の方だけ、というのが上記の解説です。そして、”~せざるを得ない”の表現については、"have no choice but to~"で置き換えられると説明しています。

こんなテーマこそコーパスの出番と思い、COCAで、"help but"に続く単語を検索してみました。

そうしますと、"cannot help but"に続く動詞は、"involuntary mental or emotional reaction"であるような動詞に特に限らないのではないかとも思われました。そのような例が存在します。


"You used to have 28 different languages spoken there - Spanish, Italian, Chinese, Japanese, Greek, Yiddish, tongues from Eastern Europe and many others, " said Vigil. "Where I grew up, my best friends were Italians. You couldn't help but learn someone else's language."
(Denver Post. 1998.)


この例において、"couldn't help but learn"は、"had no choice but to learn"と置き換えることができると思います。

専門家の解説に異議を唱える愚は百も承知で、ちょっと調べてみました。

尤も、"cannot help but~"にしろ、"cannot help ~ing"にしろ、続く動詞としては、"involuntary mental or emotional reaction"である動詞が圧倒的に多いのが事実です。そうでない場合は、"have no choice but to"で代用できないか、ということを考えるべきでしょう。

したがって、この表現はやはり、”思わず・・・”ということなのだと結論する次第です。



2012年10月4日木曜日

ビタミンCは風邪を予防しないけれども・・・ ― old wives' tale

10月になり、気候も穏やかになってきました。日中の晴れ間はまだ暑いですが、朝晩は冷気を感じることもあります。勤務先ではインフルエンザ予防接種の受付が始まり、JRや地下鉄の電車内では風邪薬や咳止めの広告が目立つようになりました。

もうそんな季節になったということです。

ところで、ビタミンCは風邪予防に良い、ということを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?私も母親からそんなことを言われて、ミカンやリンゴ、イチゴなどのフルーツ、野菜をよく食べさせられました。(別に果物や野菜が嫌いな子供ではありませんでしたが、食べる理由として大体ビタミンCを取って風邪をひかないように、という一言がついていたのです。)

ところが!です。

ビタミンCで風邪予防になるというのは、"old wives' tale"である、と報じられています。


Myth: Vitamin C prevents the common cold.

Fact: After decades and dozens of studies, it appears the idea that vitamin C prevents colds is just an old wives' tale. But there is some evidence that high doses of the vitamin, which is found in citrus fruit and other produce, may slightly shorten the length of a cold.
(Kathryn Roethel. Vitamin C may shorten cold, not stop it. San Francisco Chronicle. October 2, 2012.)


"old wives' tale"というのは、迷信、古くさい馬鹿げた話、という意味です。

ここで、"wives'"とは、"wife"の複数形(の所有格)です。"wife"というと、妻、結婚した女性を意味しますが、ここでの"wife"は結婚しているか否かに関わらず一般に女性を指すのだそうです。

研究社の大英和を引くと、”老婆の繰り言”、とありました。語源が定かではない表現のようですが、ある意味女性、特に年を取った女性に対する侮蔑が見てとれる表現のようにも思われます。

語源が定かでないようだと書きましたが、聖書のテモテへの手紙(Timothy)にこの表現が出てきます。


Have nothing to do with godless myths and old wives' tales; rather, train yourself to be godly.
(Timothy 4:7)


偶然ですが、昨日に続き、聖書で使われている表現となりました。

さて、記事によりますと、ビタミンCを多めに摂取したグループはそうでないグループと較べた場合に風邪を引く回数に差が無かったということです。つまり、ビタミンCの摂取は風邪の予防に効果なし、ということなのです。しかしながら、風邪の症状がみられる期間(日数)の短縮には、ビタミンCの効果はあると報告されています。


2012年10月3日水曜日

アップルは神様? ― giveth and taketh away

新発売されたiPhone 5での地図アプリの問題でアップル社がかなり叩かれていますが、地図アプリのみならず同社のiOS 6という基本ソフトが不評のようです。

例えば下記に引用した記事ですが、iOS 6で新しく追加され機能がある一方、以前までつかえていたのに無くなってしまった機能があるようです。


Apple giveth and Apple taketh away: features users miss in iOS 6

Last month's introduction of iOS 6 gave iPhone, iPad, and iPod touch users many things, like Do Not Disturb, new call features, and increased Siri capabilities. iPhone 5 and 4S users now have a cool new Panorama mode in the Camera app, there's Facebook integration where once there was only Twitter, we can sync Reminders and Notes over iCloud, privacy controls have received a complete overhaul, and Passbook is showing some promise.

We also had some (major) things taken away from us with the release of iOS 6. The most obvious of these things is a consistent, built-in transit experience in Maps—or pretty much anything related to iOS 6 Maps at all. But Maps seems to be just about the only thing people tend to name when thinking about iOS 6's shortfalls—or is it? A number of Ars readers wrote me with their own stories about favorite features that used to be part of iOS 5 but were since removed in iOS 6. So, I reached out to the Ars staff and Twitter in order to see what other little things users were missing.
(Jacqui Cheng. Apple giveth and Apple taketh away: features users miss in iOS 6. Ars Technica. October 3, 2012.)


さて、この記事のタイトルに注目します。


Apple giveth and Apple taketh away:


という部分ですが、"giveth"、"taketh (away)"というスペルは変?

そう、語尾の"-th"がです。

外語大などで英語を専門に勉強にされた方はすぐ分かるかもしれませんが、"giveth"、"taketh"などの語尾にある、"-th"は古英語、中期英語においていわゆる”三単現のS”にあたるものです。

ではなぜ、現代においてわざわざそんな古い言いまわしをしているのでしょうか?

調べてみますと、この


xxx giveth and xxx taketh away


というのは、旧約聖書における


The Lord giveth and the Lord taketh away


というヨブ記の一節に由来する、いわゆる定型的な表現なのです。"The Lord"という主語の部分はいろいろに置き換えられ、記事の見出しなどで使われています。

手元にある聖書の邦訳(新共同訳)を見てみると、


主は与え、主は奪う。


となっていました。


アップルは与え、アップルは奪う。


とでもなりましょうか。聖書という神聖な書物からのこのような古風な言い回しをおどけて使っているわけです。

ヨブ記におけるこの個所は、高潔で富めるヨブが、常人ならば耐えがたい程の試練が与えられるにも拘らず、それらに耐え、神への非難をしないというあらすじで、聖書の中でも非常に有名なものです。

"The Lord"を"Apple"に置き換えているあたり、アップル社は神と同等の存在とでも言うのでしょうか?はたまた、同社の製品や方向性に振り回される一般消費者は、神を前にしたヨブと同じようなもの、つまりその状況を耐え忍ぶことしかできない、ということでしょうか。


2012年10月2日火曜日

テレビは見ていない方が有害!? ― background TV

"background TV"なる表現があることを知りました。意味の想像はつきますか?


A number of studies have found evidence that too much television is bad for children's development, even when it's playing in the background and kids are not watching. Now a study has tracked just how much background TV kids get and it's a lot — 232.2 minutes or nearly 4 hours worth every day.

The average amount is even greater among some, especially children who are younger, African-American or from the poorest families, finds the study in today's Pediatrics.

The nearly four hours of background TV exposure "easily dwarfs" the 80 minutes of active TV viewing the average child in this age group absorbs daily, says the study.
(Michelle Healey. U.S. kids exposed to 4 hours of background TV daily. USA Today. October 1, 2012.)


テレビ(番組)が教育上あまり良くないといわれることがあります。アメリカでは一歩先を行くのでしょうか、テレビ自体が子供の発育にとって良くないとされており、さらにそれが"background TV"であっても良くない、ということが言われているようです。ここでいう"background TV"とは、


it (=TV) is playing in the background and kids are not watching


ということですから、テレビをつけているだけで見ていない状態のことを指しています。"background music"という表現と同様の成り立ちですが、意外な表現でした。英語という言語のクリエイティビティを感じます。日本語で、”バックグラウンドテレビ”という表現は恐らく成り立たないだろうと思うからです。

調査によると、テレビを実際に視聴している時間が1日平均80分であるのに対して、"background TV"の時間は232.2時間であり、4時間近くにもなるということが分かったようです。

ところで、このような"background TV"が何故、子供の成長に良くないのでしょうか?記事によると、


The study notes that background television exposure has been "linked to lower sustained attention during playtime, lower quality parent-child interactions, and reduced performance on cognitive tasks."
(ibid.)


とあり、バックグラウンドで流れるテレビの音声が影響を及ぼすようです。

わたしは家にテレビを設置していないのですが、偶にホテルなどに宿泊する際、部屋に当たり前のように設置されているテレビをつけるとき、ひどく集中力を奪われる気がします。それはテレビを見ていないときに(つまりテレビをつけているけれども他のことをしているときに)特に感じるのですが、テレビ番組やテレビCMというものは非常に巧妙に構成されており、人間の意識や注意をほとんど強制的に対象に向かせる効果が至る所にちりばめられていると感じます。これはほとんど抗いがたいもので、CMの効果音1つとっても、その刺激を受ける人間の注意を引くという点での効果は絶大です。疑わしいと思うなら、テレビの置いてある食堂などで、食事をしている人たちをしばらく観察してみるとよいでしょう。

まさしく、見ていないけれどもそれが(幼い子供にとっては発育上)有害、という、何とも皮肉な話ではないでしょうか。

2012年10月1日月曜日

祝!900回投稿記念 ― nongenary

本日の記事はえいご1日1語の第900回目の記事となります。

2009年5月19日に第1回目の投稿からスタートして以来、約3年と4カ月以上に渡って(月曜~金曜の)毎日1語を取り上げてきたわけですが、本日900回目の投稿を迎えてある意味感慨深いものがあります。

さて、この900回目の投稿を記念して、”900”という数字に因んだ単語や表現を取り上げようと思いましたが、そのような単語・表現がたくさんあるわけもなく、唯一見つけたのが、


nongenary


という単語です。この単語はひょっとしたらお手持ちの辞書に載っていないのではないかと思います。私も手持ちの辞書ではランダムハウス英和辞書でのみエントリを見つけましたが、研究社の大英和やAmerican Heritage Dictionary、Merriam Webster(オンライン版)などでもエントリがありませんでした。それくらい”マイナーな”単語、ということかも知れません。

さて、"nongenary"の意味ですが、900年祭、という意味です。

100年祭のことを、"centenary"というのはよく知られていると思います。200年になると、"bicentenary"、300年は、"tricentenary"・・・、というように増えていって、900年が、"nongenary"という訳です。

ちなみに、400~800までですが、


quatercentenary
quincentenary
sexcentenary
septcentenary
octocentenary


となっており、全てが"-centenary"という語尾となっているのに、900だけそのルール(?)から外れて、"nongenary"となっているのは面白いところです。

ラテン語を少し勉強したことのある方はご存知と思いますが、"nongenary"の"non-"はラテン語で9を意味する、"novem"(基数詞)もしくは"nonus"(序数詞)から来ています。

ラテン語で900は、"nongenti"ということから、900年祭の"nongenary"はこのラテン語をそのまま借用したような感じです。

300~800年祭までの単語で、数字を表す接頭辞(tri-、quater-、quin-、sex-、sept-、octo-)はいずれもなじみ深いものだと思われますが、9を表す"non-"については、否定や無を表す"non-"の方が優勢で、あまりなじみが無いということもあるのかもしれません。

数字の9を表す"non-"が使われている具体例としては、nonagenarian(90歳代)という単語があります。