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2012年8月27日月曜日

閑話休題 ― やっぱり重要な不定冠詞、"a"

人類史上初の月面着陸を果たしたアポロ11号の船長、ニール・アームストロング氏の訃報が、日本時間の昨日26日報道されました。

報道によりますと、アームストロング氏は心臓の疾患で療養中だったそうです。アポロ11号の月面着陸は1969年7月20日ということですから、私の生まれるよりも前の話です。

この訃報は当然アメリカ国内でもトップニュースの扱いになっていますが、ヘッドラインを斜め読みしていますと、興味深い記事に出くわしました。そのタイトルが、


Moonwalker's 'a' got lost in transmission
(Detroit Free Press. August 26, 2012.)


というものなのですが、"a"というのは何の事かと思ったら、不定冠詞の"a"の事だったのです。


Was the walk on the moon one small step for man, or a man?

Neil Armstrong's first words from the moon were heard all over Earth, and Earth heard this: "That's one small step for man, one giant leap for mankind."

But Armstrong said immediately after the 1969 landing that he had been misquoted. He said he actually said, "That's one small step for a man." It's just that people didn't hear it.
(ibid.)


アームストロング氏が月面に着陸した際の有名な発言、


"That's one small step for man, one giant leap for mankind."


は、”これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である”、などと日本語に訳されています。

ここで、敢えて”一人の人間”と訳されている部分について、原文(英語)では、"man"となっていますが、"man"という名詞が無冠詞(単数)で使われる場合は、学校では総称的に人類、あるいは人間を指すと教わったことがあるかと思います。

なぜ和訳では敢えて”一人の”としているのでしょうか?

実はアームストロング氏のこの有名な発言は、物議を醸したようで、発言した本人自身が、不定冠詞の"a"をちゃんと言ったものの、(聞く側が)うまく聞こえなかっただけ、という”釈明”をしている、ということなのです。

その後、この発言の録音などがコンピュータ解析などされ、音波上、アームストロング氏が不定冠詞の"a"を発言していたという証拠を突きとめたということにもなっているのだということです。詳しくは記事をご覧ください。

この発言については、アームストロング氏は不定冠詞の"a"をちゃんと含めて、"one small step for a man"と言ったが、(当時の録音技術や伝送技術などの限界で)ほとんど聞き取れなかったものとして、不定冠詞の"a"を括弧書きで挿入し、


"That's one small step for [a] man, one giant leap for mankind."


とすることで決着しているようです。

CNNの記事によりますと、不定冠詞の"a"が入るのと入らないのとでは意味が異なってくることが当時取り沙汰されたことが分かります。


Some historians and critics have dogged Armstrong for not saying the more dramatic and grammatically correct, "One small step for a man ..." in the version he transmitted to NASA's Mission Control. Without the missing "a," Armstrong essentially said, "One small step for mankind, one giant leap for mankind."
(Software finds missing 'a' in Armstrong's moon quote. CNN. October 1, 2006.)


不定冠詞の"a"がないと、"one small step for man"は、"one small step for mankind"と同義となり、後続の"one giant leap for mankind"との対比にならなくなってしまうということなのです。

このことはつまり、文法にやかましい人達による指摘があったことを裏付けている訳です。

やっぱり不定冠詞があるかないかは、非常に重要な問題なんですね。


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