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2012年6月5日火曜日

バウンドかバウンスか ― bouncer

"bouncer"という単語があります。バウンド(bounce)するもの、ということですが、”バウンサー”(bouncer)という単語から何を想起しますか?


Police have arrested one of two men suspected of fatally beating a bouncer who denied them entry into a Redondo Beach bar after last call.

Police Sgt. Shawn Freeman said Sunday that 30-year-old Alejandro Avina was arrested Saturday. He was booked for investigation for murder and is being held on $1 million bail.
(Calif man arrested in fatal beating of bar bouncer. San Francisco Chronicle. June 3, 2012.)


文脈から大体分かりますね。"bouncer"とはいわゆる用心棒の役割をしている人のことだと思われます。ランダムハウス英和辞書でも、


(酒場・ナイトクラブなどの)用心棒


とあります。American Heritage Dictionaryでは、


Slang. A person employed to expel disorder persons from a public place, especially a bar.


とあり、私は出会ったことはありませんが、屈強なコワイお兄さんを想起します。

用心棒役のことを何故"bouncer"と呼ぶのか、について考察してみました。動詞である"bounce"を調べると、この動詞自体に”(人を)追い出す、つまみ出す”(To expel by force; to dismiss from employment)という俗語の意味があることが分かります。

この意味での用法を確認するのは然程困難なことではありません。


His court-appointed backup lawyer, Anthony Jackson, wound up playing a much larger role in the trial than anticipated, filling in on the numerous occasions when the querulous Abu-Jamal was bounced out of the courtroom for disrupting his own case.
(Sara Kelly. Innocence by Association. Mother Jones. 1999.)


さて、冒頭で”バウンド(bounce)するもの”と書きながら、果たして”バウンド”なのか、それとも”バウンス”なのか、ということが気になってきました。

日本語では、例えば、ボールがワンバウンドする、などと言うように、”バウンド”の方が定着していると思います。広辞苑を見ても、”バウンド”のエントリはありますが、”バウンス”はありません。

英和辞典では、"bound"、"bounce"双方のエントリがあり、しかも定義が似通っているのでややこしいのです。"bound"、"bounce"双方に、ボールが跳ねる、バウンドする(させる)という意味があります。

ここで語源に目を向けてみましょう。

"bound"は、”跳ねる”という意味の中期フランス語bondir、さらに遡ると(音が)うなるという意味のラテン語bombitareに由来します。

一方、"bounce"ですが、こちらは”叩く”(to beat)という意味の中期英語bounsenに由来します。"to beat"は”やっつける”という意味にも解釈できますが、そうしますと"bouncer"の意味も何となく得心が行くと思いませんか?


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